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2024
517日()

松山商「あの夏」から続く青春 中高年チアダンスチーム「キャサリン・ラビット」躍動

 

 金髪ウィッグにミニスカート。スポットライトを浴びてポンポンを振る彼女たちは皆、50歳以上。アップテンポな曲に合わせたパフォーマンスで観客を魅了する。中高年のチアダンスが今、熱い。松山市で12年前に発足したチーム「キャサリン・ラビット」も、近畿、関西に計6支部ができる人気ぶりだ。チームのルーツは、54年前の「あの夏の甲子園」だった-。(豊田さやか)

還暦からのスタート

 

第51回全国高校野球2回戦の対鹿児島商戦で応援する松山商バトン部=1969年8月15日付愛媛新聞

 1969年8月、高校野球甲子園決勝。松山商業高校は、三沢高校(青森県)との延長18回引き分け再試合の末に優勝した。その松山商ナインをスタンドから応援していた同校バトン部のOGらが立ち上げたのが「キャサリン・ラビット」だ。「あの夏が今も力をくれているのよ」

 キャス・ラビの結成は2011年。松山商が甲子園優勝を果たした「あの夏」に高校3年生だった同級生の還暦同窓会を控え、余興で踊ろうと同校バトン部OGを中心に約20人が集まった。チーム名は卯(う)年生まれにちなみ、ウサギのマスコットキャラクター「キャサリン」も誕生した。

 

元気いっぱいに輝く「キャサリン・ラビット」=2022年12月

 その後、練習や衣装作りで集まるたびに、甲子園の思い出話に花が咲いた。宿舎の幼稚園で、100人超の応援団の食事の配膳や皿洗いに奔走したこと。閉まる間際の銭湯に駆け込んだこと。滞在が1週間を過ぎると、小遣いはすっかり乏しくなったが、風呂上がりに買うジュースのおいしさと言ったら…。

 

還暦の同窓会でチアダンスを披露するキャサリン・ラビット=2012年1月2日(石崎美和子さん提供)

 時を経ても、団結力は抜群。同窓会当日は、息の合ったチアダンスで大盛況だった。「みんな自分の姿は見えないもんだから、舞い上がっちゃって」と笑うのは、メンバーの石崎美和子さん(70)=松山市。「普通はそれで終わりよ。でもね、続いたんです。子育てや仕事が一段落した60歳。人生のシフトチェンジだったの」

「あの夏」の続き

 12年夏、現役バトン部から振り付けを習い直し、夏の高校野球愛媛大会へ。そろいのTシャツには「キャサリン・ラビット」のチーム名。元気よく踊り、はるか後輩の試合を応援した。

 

青森で三沢高応援団と47年ぶりに行ったエール交換=2016年8月3日(キャサリン・ラビット提供)

 16年8月には47年ぶりのエール交換が実現した。1969年の松山商バトン部キャプテンだった川政美佐子さん(71)=松山市=が甲子園の思い出を交流サイト(SNS)に投稿すると、三沢高元ブラスバンド部員から反応があった。「あの夏、グラウンドを挟んで応援していた同士、集まりましょう!」。互いに、元応援リーダーや元野球部員たちを誘い、青森県野辺地町に集結。題して「松山商三沢高激闘からの47年 今日は我ら応援団が主役だ」。

 

井上明さんのメッセージ

 

太田幸司さんのメッセージ

 再集結に際して、名勝負の立役者からもメッセージが寄せられた。当時の松山商の投手だった井上明さんは「延長15回。滴り落ちる汗が一瞬凍りつき、アルプス席の応援が揺れるのを、マウンドで感じていた」。三沢高の投手だった太田幸司さんは「暑さを忘れての大応援に、私たち選手はどんなに励まされたことか」と感謝。その後、親として甲子園の応援席に行ったといい「アルプス席のあまりの暑さと熱気にふらふらになった。グラウンドでプレーしている方が楽だった」とねぎらった・・・

スタンドから応援したキャス・ラビのメンバーが語る、あの伝説の試合・・・

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