愛媛新聞ONLINE

2024
517日()

独立リーガー2世 父から息子に受け継がれた夢

 

 2005年4月に日本初のプロ野球独立リーグとしてスタートした「四国アイランドリーグplus」。19年目を迎える今年、愛媛マンダリンパイレーツ(MP)に、初の独立リーガー2世が誕生した。松山工業高校から入団した18歳の宇都宮葵星(きさら)。父と同じ球団で、父が果たせなかった日本野球機構(NPB)入りに挑む。(清家康尊)

■親子2代の夢

 

会見で意気込みを語った愛媛MPの新入団選手ら

 「父を超えて、NPBに入る」。1月27日に開かれた愛媛MPの入団会見。宇都宮は真っすぐなまなざしで、力強く抱負を語った。

 父は愛媛MP初代メンバーの一人、勝平さん(40)。2005年から2008年の4年間、ファンから「かっぺい」(名前の読みは「しょうへい」)の愛称で親しまれた中継ぎ右腕だ。

 勝平さんが愛媛MPに入団する前年の2004年に長男として生まれた宇都宮。松山市恵原町の愛媛銀行グラウンドで父が練習に汗を流す傍ら、グラウンドの外を元気よく駆け回り、母の胸に抱かれて何度も試合に訪れた。

■父のような声援を

 

かつて父が所属した愛媛MPに今季入団した宇都宮葵星。独立リーガー2世の誕生は初めて

 宇都宮にとって、愛媛MPは物心がつく前から身近な存在だったが、父の現役時代の勇姿は覚えていない。記憶にあるのは画面越しの姿だけだ。それでも「観衆の声援を浴びてマウンドに立つ父を見て、自分もあんな風に歓声を聞いてプレーしたいと思った」と憧れを口にする。

 宇都宮は小学4年から、本格的に野球を始めた。生まれたときには家にバットとグラブがあり、野球一筋かと思いきや、当時は「サッカーとどっちをやるか迷っていた」と明かす。

 仲の良かった近所の先輩に誘われたのがきっかけで少年軟式野球チーム「椿ジャビッツ」に入団。小学5年生から、父と同じ投手を任されたが、右肘痛を発症しマウンドに立つ機会は多くはなかった。

 

葵星さんが愛媛MP入団の決意を固めた2022年のホーム最終戦

 中学以降のポジションは主に内野手で「マウンドにはたまに上がる程度」だったという。父と同じ投手に未練はなかったのかとの問いに、宇都宮は「そういうのはなかった」と、あっけらかんとした表情。愛媛MPでは遊撃手として勝負すると決めている。

 最初からプロの道を強く志していたわけではなかった。気持ちが変わったのは、松山工業高校での3年間が「不完全燃焼」で終わったことが大きい。レギュラーをつかんだ2年の夏の大会は、新型コロナウイルス禍で2回戦を前にチームが出場を辞退。最後の夏は、練習試合では一度も負けたことのなかった相手との初戦で、延長の末にサヨナラ負けした。

 「もっと野球を続けたい。できれば、より高いレベルで」。高校野球部を引退した後、プロを目指したいという思いを強くした。目標を実現するために、考えた選択肢は二つ。大学進学か独立リーグか。

 悩んだ宇都宮は、父とともに愛媛MPの試合に足を運んだ。観戦したのは、2022年9月11日に坊っちゃんスタジアムで行われた昨シーズンのホーム最終戦。愛媛MPの選手たちは首位を1ゲーム差で追いかける中、後期優勝の望みをつなぐ7-1の快勝をファンに届けた。約1100人の観衆から声援と祝福を浴びる選手たち。映像で見た父の現役時代と同じ光景が、愛媛MP入団の決意を固める決め手となった。

 

■良き理解者として

 

愛媛MPで投手として活躍した現役時代の勝平さん(2006年)

 父勝平さんは、息子の選択をどのように捉えたのか・・・

 

【険しいNPBへの道。同じ志を胸に愛媛MPへと入った息子を、父はどう思っていたのか】

    残り:1138文字/全文:2408文字

    有料記事のためデジタルプラン購入が必要です。